液体金属

8月も中旬を過ぎると少し和らいだが、今年の夏は、体温を超えるような日が多かった。まさに体が溶けそうだ。
で、今日は液体金属について。
一般的に、金属というと銀色、堅いが柔軟性もあるというイメージ。
やまと言葉には金属に関することばは少ない。”かね”がベースで、それから、あかがね(銅:Cu)、しろがね(銀:Ag)、こがね(金:Au)、くろがね(鉄:Fe)などが派生。一方、火山国である日本では水銀はなじみ深い金属だった。朱色の硫化水銀は印鑑の朱肉として用いられてきた。また、虫歯の充填、水銀軟膏など医療用にも用いられた。
金属水銀は気圧計、体温計に用いられてきたように液体である。英語はmercury, quick sileverと、水銀玉がころころと速く動くことに由来している。元素記号のHgは hydor(ギリシア語:水)+ argyros(ギリシア語:銀)に由来。
原子番号は80で、密度が13.6g/cm3と重たいのに、液体である理由はその閉殻電子構造と相対論効果が絡んでいる。相対論的効果で原子半径が小さくなり、イオン化されにくくて水銀原子同士の結合が弱いためである。また、水銀原子の電子配置が閉殻構造であることも関係している。それより前の元素(Wなど)はd電子の絡みで高融点であるのとは対照的。
強風、紫電改に搭載された自動空戦フラップの水銀スイッチ。私の父親は川西航空機に勤務していたが、小さい頃、二式大艇や紫電改の自慢話を聞かされた。この水銀スイッチは技術漏洩を防ぐため、機体を離れる時は取り外すよう飛行士に指示があったと聞いている。
エネルギー関係では、水銀電池やアルカリマンガン乾電池などで重用されたが、今は昔。鉛と同様に水素発生に対して、負の触媒作用を示すことが利用された。
水素の反応に対する負の触媒性と液体であることを利用したのが、ポーラログラフィー (polarography)だ。 電気化学における測定法のひとつであって、ボルタンメトリーとして最初に考案された方法である。滴下水銀電極と,容器下部の大面積の水銀を電極として,試料溶液の電気分解を行なって電圧と電流の関係を記録し,それを解析することによって,定量・定性分析,電極反応の研究などを行う。ヤロスラフ・ヘイロフスキーと志方益三によって考案・発展された。ヘイロフスキーはこの業績によって1959年のノーベル化学賞を受賞した。歴史的に重要な手法であるが、毒性のある水銀を使用すること、他にすぐれた固体電極や測定法が開発されたことなどにより、今日では使用されることは殆ど無い。水銀滴が或る程度以上に大きくなると落下し新しい水銀滴が成長するため、電極表面は清浄さを維持できる。
使用される場が減ってきたのはもちろん水俣病など、その毒性が社会的な問題を引き起こしたからである。尤も、古い例では、奈良の大仏の造営においては、金のアマルガムを像に塗布した後、燻蒸して水銀を飛ばすことにより、金めっきを施す技術が用いられたが、その際、被害があったと考えられている。
たとえば、以下の記事をご覧頂きたい。
粉体工学から見た奈良大仏
平城京 水銀が命絶つ
蛍光灯には水銀が使われているが、高効率のLEDができてからは活躍の場所が減りつつある。
常温で液体の元素の代表格であるが、現在はその毒性のため、必要最小限の使用に留まっている。
10年前頃の記事と思われるが、産業的な位置づけは以下をご覧頂きたい。
日本における水銀の需給状況と最新技術によるリスク削減のための取組
これは環境省のサイトにある記事だが、水銀に対する国際的な取り組み全体については以下から入って頂きたい。

水銀に関する国際的な取組

液体金属にはGaもある。融点が室温より少し高い29.76°Cだ。ガリウムという名前はフランスで発見されたことによる。名前からガリア戦記を連想するかも知れない。半導体材料のGaAsが知られている。金属電析では、析出した金属が液体中に溶け込むので、格子組み込みの過程が無いとして、結晶成長メカニズムの研究に用いられたことがある。

現在では、液体金属というと、「ターミネータ2」のT-1000を想起する。流体多結晶合金(液体金属)製というが、その詳細はよく分からない。いずれにせよ、ターミネータ1の改良型として、きわめてドライなイメージであったが、溶鉱炉での最後の際、それまで擬態した姿が次々と現れたことは印象的だった。



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