鳥と燃料電池

 春分の日を挟む連休、自宅のリビングにウグイスの声が入り込んできた。如何にも練習中という感じがして初々しかった。直ぐに上達して恋を成就するのであろう。しかし、5月になると、ホトトギスがインド・中国南部辺りからやってくる。私は毎年忍び音(その年のホトトギスの初音)を心待ちにしている。が、ホトトギスはウグイスに托卵をする或る意味でけしからん鳥だ。鳥類は基本的には恒温動物だが、ホトトギスはそれが不完全であることと関係しているらしい。体温が低いと雛は孵化しない。しかし、なぜはるばる日本まで?体温が下がるならば出発地付近に留まればよいと思われるが。 
 空を飛ぶのは気持ちがいいがそれなりの装備を揃えるのには投資が必要だ。鳥の体にはびっくりするような機能が満載である。たとえば、ヘンク・テネケス、「鳥と飛行機どこがちがうか―飛行の科学入門」草思社 (1999/10)は航空力学を,身近にいる鳥や昆虫を題材にして、色々な観点から分かりやすく解説した楽しい本である。
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空を飛ぶことが大変なことは、第二章「飛ぶのはつらい」に、飛行速度とエネルギーの関係、栄養源などの話題が採り上げられている。仮にヒトが空を羽ばたいて飛ぶとすれば、1m以上の厚みの胸筋が必要らしいが、絶対値はともかく、大出力が必要だということは理解できる。実際は、その筋肉を支える骨格や呼吸などの問題があろうから素材を変えないで飛ぶことは無理であろうが。燃料電池の観点で興味深いのは、鳥の肺と気嚢の構造と機能だろう。鳥では、常に新鮮な空気が一方通行で肺の中を流れる。空気を貯めておく袋である気嚢が九つほどあり、肋骨と胸骨の動きに連動して、ふいごのように肺へ空気を送り込む。ガス交換部はチューブ状になっており、空気は一方向に流れる。だから高い標高を飛ぶこともできる。
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ヒトは空気の入り口と出口が同じだから、吸い込んだ空気(酸素)の一部しか利用されない。従って、ヒトはゆっくりと登っても高山病になるが、アネハヅル、ソデグロヅルなど、鶴の仲間にはヒマラヤを高速で越えることができるものがいるらしい。鳥類が大気から血管に取り込める酸素量は哺乳類の2.6倍だそうだ。一方、毒ガスなどがあると、わずかな量でも深刻な影響を受けてしまう。何事も面と裏がある。最近の燃料電池車(FCV)の出力密度が高くなっているのはセパレータの薄膜化や触媒の高性能化の寄与もあるが、セパレータの構造が見直されたことも大きく貢献している。金属製セパレータは薄型化・プレス成型に適しているが、電気化学的な安定性(耐食性)の点でまだ検討が必要な面がある。
 私が燃料電池の研究に携わり始めたのは1992年だから、既に24年になる。四半世紀だ。その間、色々考えてみたが、なかなか新機軸として打ち出すことは難しかった。それでも鋭い頭の持ち主で無くとも長く続ければ気づくことがある。それは、やればやるほど、生物のシステムの模倣ないしは近づくことだということである。今後も生命に関する科学に関心を持って行きたいと思う。

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